「賢明なる投資家」
バフェットの師匠であるグレアムの代表作の一つ。
本書を通底しているのは、
「資産」という実物を重視し、「成長」とか「将来の収益力」などという、しばしば過大評価されがちな要素に対するグレアムの極めて強い警戒感とか、投機に対する強い嫌悪感とか
グレアムの、人間臭さというか、根底にある恐怖感や警戒心、慎重さ。
また、本書の、投資の歴史を俯瞰するスタンス。
1961年はこうだけど1970年にはどうだった、とか、基本的に5年10年20年のスパンで物を語る。
過去を大きくとらえて、その延長で今を捉える。
こういうスパンでの語り口に触れると、やはり1年や2年、3年程度の期間の出来事というのは、些末なものに思えてきます。
あくせくするなよ、じっくりやろうよ、そうグレアムが言っているような気がします。
そういうゆったりとした(同時に激しく情熱的でもありますが)スタンスも、本書の良いところではないかなと思います。
本書を読んで一つ残念なのは、『証券分析』や『賢明なる投資家』が執筆された当時の株式投資業界の通念的な考え方がどのようなものかが、よくわからないことです。
そういう通念的な考え方をどっぷり身につけていた当時の人ほど、グレアムの考え方は革新的・革命的なものと感じられるのではないでしょうか!?
往々にして、現在の古典は、当時の最先端ですよね。
今は、本書は完全に古典となってしまっていますが。
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